片目だけの物体を覚えることができますか?相貌失認の人がうわさ話や人付き合いをしない理由
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ここにいろんな人の「片目」や「片手」や「襟元」がたくさんあるとします。
みなさんは、これらの物体に名前をつけて、それぞれ覚えることができますか?
相貌失認の人は、うわさ話やおしゃべりを殆ど楽しもうとしません。人付き合いも殆どしません。そのため、人に関心がないように思われがちですが、実はそうではありません。いつも人と仲良く過ごしたいと思っています。
ではなぜ、相貌失認の人はそのような行動をとるでしょうか?
その答えは、相貌失認の見え方に原因があります。
相貌失認の人は、注目した部分だけがインパクトを伴って、拡大されて見えます。目に注目した場合は「目」だけ、手に注目した場合は「手」だけしか認識できません。
そのため人の顔全体を認識することができません。
さらに、一人の人間に注目した場合でも、注目した場所によっては、「目」や「手」や「上履き」に変わります。さらにわけがわからなくなります。
わかりやすくご説明しますね。
例えばここに藤本さんという人がいたとします。
相貌失認の人が、藤本さんの目に注目すると藤本さんは「目さん」になり、次の瞬間、手に注目すると藤本さんは「手さん」になります。「目さん」も「手さん」もどちらも藤本さんです。
つまり相貌失認の人にとって藤本さんという人は、単体ではなく、目や手やズックなど、その時々に注目したパーツ部分が、藤本さんになります。
パーツだけで人を判別できる人が、この世にいるでしょうか?恐らく誰もいないと思います。
これが相貌失認の人が、人を覚えられない理由です。
相貌失認の人にとってうわさ話というものは、「片目のAさん」と「襟元のBさん」から、「目や手のパーツである藤本さん」のうわさ話を聞く、ということにまります。
相貌失認の人にとって世の中というものは、オバケ屋敷か妖怪大集合のように見えるのです。
つまり相貌失認の人は、人のうわさ話を聞いても、誰が何をしたのかさっぱりわからないのです。
付き合い程度に相槌を打つことならできますが、うわさ話に加わることは殆どできません。だからおしゃべりをすることよりも、自分の好きな本を読んだり創作活動をしたりすることの方が多くなるのです。
このような理由で、相貌失認の人は、うわさ話をしたり、おしゃべりを楽しんだりすることがあまりできないのです。ですが、決して人が嫌いなわけではないのです。
(TkyoSkyさんによる写真ACからの写真)
また、人付き合いをしない理由もこれと同じになります。
毎日毎日、誰が誰だかわからない(=いつまでたっても馴染みにならない人)と安心してお付き合いができますか?普通はできませんよね。
相貌失認の人は、だんだん馴染み深くなり、次第に仲良くなっていく、あるいはいつの間にか仲良くなっていた、という過程がわかりません。そのような経験もありません。
学校のような環境下で毎日顔を合わせていても、人が覚えられない以上、いつまでたっても見知らぬ人に囲まれているような感覚で過ごしています。(多少は慣れるようですが)
従って、人付き合いをしないというよりも、したくてもできない、というのが正解のようです。
(Yuzu48さんによる写真ACからの写真)
ところが、相貌失認の人にも1つだけ馴染みの友達をつくる方法があります。
それは、「特徴的なパーツを持った人」を見つけることです。
例えば「ぱっちりお目めの人」「眉毛が太い人」「特徴的なメガネをかけている人」「特徴的な髪型をしている人」などです。
特徴的なパーツを持った人は、覚えやすいのです。
実際にこれまでのソボの友達は全員、特徴的なパーツを持った人達ばかりでした。
ただし、その人たちが眉毛を整えたり地味なメガネに取り替えたりした場合は、もう見分けがつかなくなり、再び見知らぬ人に戻ってしまいます。また、友達を見つけることも困難になります。
相貌失認の人にとって「友達のイメチェン」は、友情の終わりを意味するのです。
なんとも切ない話です。
ご精読ありがとうございました。