相貌失認の人は 誰も自分の話を聞いてくれないと思っている
相貌失認の人は、誰も自分の話を聞いてくれないと思っています。
ですが幼い頃からそのように思っているわけではありません。年齢を追うごとに、周囲の態度から、次第にそのように思い始めるようです。
例えば学校の体育の時間に、たまたまA・B・C・という人がソボの近くにいたとします。この3人は交互に話したり聞いたりして会話をしています。
そこでソボも会話に加わろうとして自分の話を始めるのですが、なぜか誰も相槌を打ってくれません。
3人は何事もなかったかのように会話を続けます。
すると「自分の話はつまらないんだ。誰も自分の話を聞いてくれないんだ。自分には価値がないんだ。」とソボは感じます。
本当にそうでしょうか?
いいえ、実はそうではありません。そんなことは全然ないのです。A・B・Cに悪気はないのです。
実は同じようなことが家庭の中でもよく起こっていました。
ソボは家の中でも「誰も私の話を聞いてくれない」と時々言っていました。
でも家族には誰も思い当たる節がありません。そんなことないよ、とみんな首をかしげるばかりです。
それでは一体どういうことなのでしょうか?
そのからくりはこうです。
最初に会話をしていた3人は、恐らく交互にお互いの顔を見ながら会話をしていたと思います。
ですが相貌失認のソボには、元々人の顔を見て話す習慣がありません。いえ、人の顔を見るどころか、体の向きさえ違う方向を向いて話をするのです。
人の顔が認識できない以上、人の顔を意識することはありません。
また相貌失認の人は、音に頼る生活を送っています。俗にいう地獄耳です。
そのため、ふいに耳に入ってきた3人の会話に反応して話を始めるのですが、3人の方を向いていないため、3人からすると、独り言だと思われてしまうのです。
相貌失認の人は、成長と共に自然に身に着く会話のマナーがわかりません。
もしかしたら周囲から「独り言の多い人」と思われている可能性があります。
このように相互に誤解が生じてしまうことが、相貌失認の人が人間関係を築けない原因の一つになります。
そして成長するにつれて「自分はダメなヤツ」との思い込みをどんどん強めていき、そしてそれに伴って、自己肯定感もどんどん低くなっていくというわけです。
ご精読ありがとうございました。