相貌失認の人は、なぜ大人になっても赤ちゃんのように「口の中で物を確かめる」のか
相貌失認の人は、大人になっても赤ちゃんのように「口の中で物を確かめる」ことがあります。それはどういうことかというと、
相貌失認の人は、大人になってからも赤ちゃんのように、口の中に物を入れて、舐めたり噛んだりすることで、それがどのような物かを確かめようとする
ということです。
ではなぜ赤ちゃんは、何でも口に入れてしまうのでしょうか?
それは、赤ちゃんが生まれてから一番最初にする活動が、お乳を飲むことだからです。そうすることによって、口周りの感覚や筋肉が、体の中で最も発達します。
つまりまだ視覚や聴覚が発達していない赤ちゃんは、体の中で最も発達している口の中を使って、物を確かめようとするのです。
やがて赤ちゃんの視覚や聴覚が発達してくるにつれて、次第に口の中ではなく、手と目を使って物を確かめるようになっていきます。
私はこの理論を知って、大いに腑に落ちました。
ソボは、17歳のときに相貌失認が矯正されましたが、それ以前は時折、いろんな物を口の中に入れて味をみたり、噛んだりしていました。
汚いからやめなさい、と言っても効き目はありませんでした。ところが矯正後になると、時間の経過とともに、そのような行動は次第に減っていきました。
つまり相貌失認の人が大人になっても赤ちゃんのように「口センサー」を使う原因は、「視覚が発達しなかったから」に他なりません。
視覚が発達しなかった相貌失認の人は、視覚に頼ることができなかったため、口の中で物を確かめる習慣が、成長後も残ってしまったのではないでしょうか。そしてそうすることによって、口の中の味覚や触覚が増々発達していった可能性があります。実際にソボの味覚は非常に敏感です。現在でも出汁の種類や隠し味、ほんの少しの塩気でも、面白いほどピタリと当てることができます。
人間というものは、ある器官が頼りにならないと、他の器官で代替するものなのですね。人間の生きようとする力は驚異的だな、と改めて感心しました。