相貌失認がんばり隊

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なぜか友達ができない相貌失認なりの理由

相貌失認のソボの友達作りには、毎年ある決まったパターンがあります。

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それは、「クラス替えをした直後は大勢の友達ができるのに、6月初旬になると殆ど誰もいなくなる」というパターンです。

元々ソボは明るい性格なので、クラス替え直後にはたくさんの友達ができます。最初の一か月くらいは「今日はポポって人とピピって人と一緒にお弁当食べたんだよ!」とか「今日はルルって人と一緒に帰ってきたんだよ!」とか非常に楽しげな様子なのですが、6月頃になるとなぜかいつも一人になってしまいます。時には問題を抱えた友達が一人だけそばにいるときもあります。

問題を抱えた友達でもソボと気が合って仲良くしてくれるならそれでいい、と私は考えていました。でもやはり問題を抱えたお友達は、中々キョーレツで口が悪く、ソボに命令をしたり何でも文句を言ってくるタイプの子が多いのです。

そのようなお子さんは人との関係が「支配する、される」だけに特化していて、対等な人間関係が学べていないように感じられました。

すると次第にソボはその子といるのが辛くなり、最終的には一人で過ごすことを選択します。その時期が大体5月下旬~6月初旬ごろになるのです。その頃になるとソボにとって学校は、もはや楽しい場所ではありません。ですが、毎年のことなので本人はそれほど気にしていないようでした。

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それでも私は、ルルさんやポポさんはどうしたの?と聞いてみます。するとソボは
「わからない、どっかへ行っちゃった」
と言います。じゃあ、ルルさんとポポさんの名前はなんていうの?と聞くと、いつも
「わからない」
と言います。

どうもこの子は人に興味がない。クラスメイトの名前もわからないなんてどういうことだろうか。毎年私は疑問に感じていました。

じゃあ、自分から二人に、一緒にお弁当食べようって誘ってみたらどう?とアドバイスしてみましたが、ソボの返事は
「どこにいるのかわからない」
というばかりで、全くラチがあきませんでした。

こんなバカなことがあるだろうか!教室を見回せばクラスメイトの居場所なんてすぐにわかるだろうに!それさえもしようとしないなんて、横着にもほどがある!私は次第にバカバカしくなってしまい、ソボと話し合うことを諦めました。

何かがおかしい。絶対におかしい。何がおかしいのか分からないけれど・・・・。
人への興味や執着が全くない。

なぜこの子は友達ができないのだろうか?

私は長年、この問題にずっと悩まされてきました。その答えがわかるのはそれからずっと先になるのですが、当時は心配でたまりませんでした。

 

今になって思うには、確かに人の顔がわからなければ、仲良しの友達を作ることはできないでしょう。名前と顔を一致させることはできないでしょう。周囲の風景がわからなければ、人を探すことはできないでしょう。

例えばネネさんが笑顔で「ソボちゃん、今日も一緒にお弁当食べようね」と誘ってくれたとします。でもソボの方は「え?誰?急に知らない人が誘ってきた。(警戒!)」となり、顔がこわばってしまうかもしれません。

まだ数回しか話したことのないネネさんの声を聞き分けるには、もっと時間が必要です。しかもソボには、人の顔(目)を見て話す習慣がありませんでした。いつまでたっても目線を合わせようとしないソボを見て、ネネさんが気を悪くしてしまっても無理はありません。

ある日のことです。帰宅したソボが私に言いました。
「先週ずっと一緒に帰ってたルルって人が、毎日下校時刻になると自分を待っているんだけど、怖いから断っちゃった。」

「ええー?それは毎日ソボと一緒に帰りたいんじゃないの?仲良くなりたいんじゃないの?ソボはルルさんのこと嫌いなの?」

「嫌いじゃないけど、よく知らないし、先週1週間一緒に帰っただけなのに待ち伏せされているみたいでイヤだ」
「え?そうなの?・・・・・・。」

私は仰天しました。人にもよると思いますが、大抵の人は3回程度一緒に過ごせば、友達とまではいかなくても、少なくとも知り合いだと認定するのではないでしょうか。ソボにはその感覚がまるで無く、人との距離感が遠すぎるように感じられました。

恐らく相貌失認のソボには「学校では仲良しの友達とつるむ」という風景が見えていなかったのではないでしょうか。だから「同じ人と毎日一緒に帰る」という概念がないのです。ソボ自身は「学校は近くにいる人と適当に過ごす所」と思っていた節がありました。

もし幼いころから周囲の状況が見えていればどうだったでしょうか。恐らく他の人がどのように友達を作って、どのように過ごしていたかが分かったでしょう。そして自分も同じように過ごしていたはずです。

 

相貌失認の人は、周囲の人を手本にすることができません。そのため年相応の成長を遂げることができません。

 

残念ながらソボには仲良しを作るという概念が育っていませんでした。だから毎日一緒に帰ろうとしている人を薄気味悪く感じてしまったのではないでしょうか。

このようにしてソボは、「友達になりたいな」と近づいてくる人をほとんど自ら無意識に撃退してしまうのです。こうして友達は徐々に離れていきます。でも見えないソボには、友達ができない原因が自分にあることを、いつまでたっても理解することができないままなのです。