1つの風景を2つのモードで自在に使い分けて見る相貌失認
相貌失認のソボが矯正メガネを着用するようになってから一か月程経過したときのことです。鏡を見ながらソボがボソッと言いました。
「自分ってこんな顔してたんだ。」
「想像していた顔と違うなぁ。自分はモンスターだと思っていたけど、案外フツーの平凡な顔だった!」
(ソボが自分の顔をどう感じていたかについては、下の過去記事を参照してください)
そうしてメガネをかけたり外したりして、見え方の変化をしばらく楽しんでいました。
このように相貌失認のソボは、矯正メガネを着用するようになってから、状況に応じて、2つのモードを自在に使い分けて物を見るようになりました。
その2つのモードとは、「矯正メガネモード」と「相貌失認モード」です。
「矯正メガネモード」は一般的な見え方をしていますが、「相貌失認モード」は注目した部分がインパクトを伴って、拡大されて見えます。そのため日常生活は「矯正メガネモード」、細部を観察したい時はメガネを外して「相貌失認モード」で見るようにしています。
ソボはこの「相貌失認モード」を天然望遠鏡と呼んで活用しています。
この天然望遠鏡はあらゆるところで活用できるのですが、実はメークをするときに大いに役立ちます。
例えばアイメークや口紅を描くときは、メガネを外して天然望遠鏡で見ながら描くと細部までしっかり描けます。
一方、眉毛を描くときは左右のバランスが必要なので、矯正メガネを着用して「矯正メガネモード」で描きます。
その他にも、細かい文字を確認したいときは「相貌失認モード」、全体の着こなしのバランスを見たい時は「矯正メガネモード」というように状況に応じて使い分けています。
ですが、1つだけどうしても矯正メガネを外さなくてはならない場面があります。
それは水の中です。
プール・温泉・海などです。
プールサイドや湯舟の外では矯正メガネをかけることができますが、水や湯舟に浸かっているときは絶対にメガネを外さなくてはなりません。強制的に「相貌失認モード」になってしまいます。海の景色を見ながら泳ぐことができないので、少し残念です。
ですが、最近私はこう思うのです。
もし見たくない風景に出会ってしまったら、そっとメガネを外すだけでよい。
そうすれば風景全体が自然と視界から消える。
相貌失認で生まれてきたことは、ソボにとっては苦労の連続であったと思いますが、
「1つの風景を2つのモードで自在に使い分けて見られる人」
というのも、そう滅多にいないのだろうと思います。何だかちょっといいな、と感じました。