相貌失認がんばり隊

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相貌失認の人が集団行動できないわけ

「ソボちゃんのことでちょっとお話しがあります。」
幼稚園の先生から電話がかかってきたのは、ソボが入園した年のゴールデンウイーク明けのことでした。

日ごろからソボの行動に疑問を抱いていた私は、ドキリとしました。

「ソボちゃんが入園してからずっと気になっていたんですけどね・・・。ソボちゃんは自由時間が終わってチャイムが鳴っても、一人でお庭でずっと遊んでいるんですよ。お友達はみんな教室に入っているのに、ソボちゃんはずっと砂遊びをしているんですよ。声をかければ教室に入るんですけどねぇ。耳が悪そうにも見えないんですけどねぇ。」

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先生の話はそれだけでした。だからどうしてほしいということは特になく、ただ客観的に事実を淡々と伝えてきただけでした。

「すみません。ソボに聞いてみます。気を付けるように言ってみます。ご連絡ありがとうございました。」私はそう返事をして電話を切りました。

そこでスイミングから帰ってきたソボに早速聞いてみることにしました。するとソボは、何のことだかかわからないという顔をしました。

だからみんなが教室へ入ったら、ソボも教室へ入らないといけないんだよ。私は繰り返し説明しました。するとソボは即座にムキになって「入ってるよ!」と答えました。だめだ、この子はわかっていない。私もムキになって続けました。

「でも先生から今日電話があって、みんなが教室に入る時間になってもチャイムがなっても、ソボだけ外で砂遊びをしてるって。一人で遊んでいるときならいいけど、みんながいる幼稚園ではチャイムが鳴ったら教室へ入らないといけないよ。」


「一人だよ!!」
するとソボは泣きそうになってそう答えました。

え?一人?幼稚園で?なんで?あんなに大勢の子供がいるのに?なんでウソつくの?何かカンチガイしているの?

私はソボに何と切り返して良いのかわからなくなり、とにかくチャイムが鳴ったら教室へ入るんだよ!と強く言って、夕食の支度を始めました。

ですがこのとき「一人だよ!」とソボが断言した理由は、10年以上も後になってから分かるのです。それもそのはず。相貌失認のソボには周りの風景が見えていなかったのです。そもそも人の顔を見ると目や鼻や口に見え、人の体を見るとボタンや名札や紺色の断片(園服の色)に見えるのです。

4歳のソボにとって、それらの断片が「人」であると認識することはできませんでした。ソボにとって幼稚園とは「ただメンタマやボタンがたくさんある、騒がしい所」に過ぎなかったのです。

「一人だよ!」と断言したソボは、うそつきでも何でもなく、ただ正直に自分が見た事実を伝えていただけでした。

やがて幼稚園生活を送るにつれて、それらの断片が「人」であると次第に認識していったようですが、そのきっかけが何だったのか、はっきりとは断定できません。

ですが恐らく「みんながいる幼稚園では、チャイムが鳴ったら教室へ入らないといけないよ!」と言った私の言葉で「目の断片=みんな(人)、チャイム=教室へ入る」と認識した可能性があります。翌日からソボの問題行動はぴたりと止みました。

このように、周囲が見えていれば当然学習できるようなことでも、相貌失認のソボには一つ一つ教えていく必要がありました。