相貌失認がんばり隊

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相貌失認 矯正メガネの絶大な効果とそれに伴う困惑について

矯正メガネ(カラー偏光レンズ)を着用するようになってから、ソボの生活レベルは劇的に向上しました。そこで、「以上を持ちまして、これで万事解決です!」と申し上げたいところですが、現実はそうはいきませんでした。

 

何しろ17年間信じてきた世界が1日でひっくり返ったわけですから、そう簡単に気持ちが切り替えられるものではありません。戸惑いが生じてしまうのも無理はありませんでした。

そこで今回は「相貌失認 矯正メガネの効果とそれに伴う困惑について」ご紹介したいと思います。

 

矯正メガネの効果について

  1. 人の顔が覚えられるようになった。
  2. 周囲の状況や風景がわかるようになった。
  3. そのため人の動きに合わせられるようになった。
  4. 外出を怖がらなくなった。
  5. 本や動画を楽しめるようになった。
  6. 距離感が測れるようになった。
  7. そのため球技を楽しめるようになった。
  8. 音の出どころがわかるようになった。
  9. 断片的だった記憶が1つにまとまるようになった。
  10. 迷子にならなくなった。
  11. 転んでけがをしなくなった。
  12. 絵が上達した。
  13. 食べ物がおいしく感じられるようになった。
  14. 人の表情から感情を読み取ることができるようになった。
  15. 人にぶつからなくなった。

これらの結果に鑑みると、生活上の効果は絶大でした。スポーツや娯楽の幅が広がり、迷子やケガも減少しました。過去に訪れた場所を再び訪問しては、景色や立体感を確認する日々が続きました。

 

意外だったのは、9と13です。これまで断片的だった記憶が、ストーリー性をもって1日の行動を振り返ることができるようになりました。また目の前の食べ物を認識できるようになり、味覚もアップしました。

ですが冒頭でも述べた通り、良いことばかりとは限りません。その一方で水面下では、様々な困惑も感じていたようです。次は「矯正メガネの効果に伴う困惑について」ご紹介したいと思います。

矯正メガネの効果に伴う困惑について

  1. 自分の顔や体型が、記憶していたものとちがう。
  2. 家族や知人の顔や体型が、記憶していたものとちがう。
  3. 人によって喜怒哀楽の表情が異なることがわからない。
  4. 喜怒哀楽には強弱の幅があることがわからない。
  5. 派手な人や目立つ人につい目がいってしまう。怖い。
  6. 集団に圧倒される。
  7. 人と自分と比較して落ち込む。
  8. 過去の自分に対する罪悪感と後悔に苛まれる
  9. 人の目が気になるようになった。
  10. 早く遅れ(若者らしい行動・雰囲気)を取り戻さなければ、という強い焦燥感で苦しむ。
  11. もう失敗や言い訳は許されない、という強い気負いで毎日が緊張状態。


1,2に関してですが、相貌失認の人は、自分が認識した特殊な造形の通りに物体を記憶しています。したがって自分の記憶の中の造形と、矯正後に見た造形が一致しないことに、かなりの違和感を感じていたようです。この違和感を収拾するのに半年ほどかかりました。

3,4,5,7,9に関してですが、普通に見えていれば物心ついたときから自然に学べたことではないでしょうか。相貌失認であったがゆえ、そのような対人的・社会的経験を積むことが殆どできなかった可能性があります。

5,6、7,9に関してですが、恐らく矯正前は親のことも含め、周囲の人のことをそれほど意識してこなかったのではないでしょうか。矯正前のソボの現実は、「自分の思考・相貌失認で見たもの・聞こえたもの」のみで構成されています。ところが矯正されてからは、これまでの現実の印象がガラリと変わり、人の表情や様子・全体の風景等、今まで見えなかったものが見えるようになったわけです。他の人より社会経験が少ない17歳のソボが、「誰からも教示されずに、激変した現実を一人で受け入れていく過程」には、相当な葛藤があったと考えられます。

8に関してですが、現在の自分の状況を目の当たりにすることで、自然と過去の自分と対比させてしまったのではないでしょうか。知らず知らずのうちに大失敗してきたのではないか、人に迷惑をかけてきたのではないかと、非常に心配になったようです。ですが「仕方なかったんだよ」と周囲から何度も何度も説明されることにより、次第に過去に目を向けなくなっていきました。

10,11に関してですが、同世代の人を観察することで、自分と様子が違うことに違和感を感じていたようでした。経験は少しずつ積めばいいと頭では分かっていながらも、どうしても焦りを抑えることはできませんでした。

またソボには「失敗を繰り返して成長していく」という自身の経験が極端に少なく、その上他人の成長の過程を見聞きする機会もありませんでした。そのため失敗したらオワリと思い込んでいた節がありました。だから矯正後は、もう言い訳はできない、失敗は許されないと自分で自分を追い込み、日増しに疲弊していったと考えられます。

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まとめ

相貌失認矯正後は一見すべて解決したように見えましたが、水面下でソボは多くの困惑や葛藤を抱えていました。ソボのこんがらがった糸をほぐす為には、長きの時間が必要でした。実際には3~4年程度の歳月がかかったと思います。

時には家族だけでは対処できないほどの心の傷がありました。そのようなときは心理士さんやメンタルクリニックでお世話になりました。学校関係者の方々にも多大なるご理解を頂きました。おかげ様で現在は元気になり、大学に通いながらアルバイトをしています。そしてお金を貯めて憧れの一人暮らしをしようと夢見て頑張っています。

相貌失認だったソボは、子供時代の社会経験や対人スキルが不足したまま現実世界が一変し、いきなり若者世界へと突入してしまいました。そのため現状の変化に心がついていかず、心理的な葛藤が生じてしまいました。

相貌失認だけでなく、何らかの体の不自由を感じている人には、身体的なサポートだけでなく心理的なサポートも与える必要があると強く感じられました。

 

自分で解決できないときは一人で悩まず、周囲に助けを求めることによって、道が開けてきます。そして人は助け合いながら、周囲に感謝しながら生きていくんだなぁと実感させられた4年間でした。